連載第十回目

★辞表を出す
こうして学歴あれば勝てる!という傲慢さで自滅。新卒で入社したヤマハ発動機は、入社したその年の年末にノイローゼ退社。でも、優しい会社&所長でしたね。最初に多摩営業所の渡辺所長に辞表を出したのは10月頃でしたが、まあ一応拒否してくれました。まだやれるということと、今辞めたら年末のボーナスがもらえないぞ・・みたいなことを遠回しに言ってくれて。まあ、でも全くのウワの空で夢遊病患者のよう。再度頑張ろうとは思いましたが、全く足が会社とお客に向かない。再度年末に辞表を出し、さすがに諦めたのか受け取ってくれました。あの時は本当に、人生はコレで終わったと思いました。「転職」なんて全く考えていなかったし、所内に中途入社の人がいましたが、中途=仕事が出来ない人・落ちこぼれというイメージでしたしね。有名大学を出て一流企業。その後は出世競争を勝ち抜いて部長、役員、社長になる!という研修時代の夢は、アッという間に壊れました。
★公務員になろう
それも一番ガンバってホラ吹いてた自分が、一番最初に挫折するなんて。少林寺拳法で鍛えた精神力?なんてどこにもありませんでした。当然ですが、退職したら寮も出ないといけません。しかし、とても田舎には帰れない。一人博多にいる母親にも内緒にしてました。母は天下のヤマハ発動機に息子が就職したということで、あんなに喜んでいたのに。友人知人にも自慢でしたからね。恥ずかしい。たまに就職失敗やリストラで自殺したり、自棄になって犯罪を犯す人がいますね。それも意外に高学歴の人が。あの気持ちはわかります。人から見たらなんで?みたいなことでも、出世のレールから外れることは怖い。精神的に病んでも、悩みがあっても人には話せない。そんなことが会社にばれたら、もう出世は終わりだと思いますからね。特にプライドだけの高学歴・一流会社のサラリーマンに多い。よく、週刊ダイヤモンドなどで「出身大学別の出世ランキング」なんてやるでしょう。あれはねえ、実は相当な読者がいるんですね。一部のバカ大企業・官庁を除き、もう10年前に学歴主義は崩壊しましたが、あれを見て安心するんですよ。バカなヤツは。「今は目が出てないが、俺は早稲田大学だ。出世ランクでは第4位。だから大丈夫だ」なんてね。何を隠そう、私もそういうランク表を見て慰めてましたよ。俺は立命だから、国立一期校や早慶には負けるが、まだまだ無名大学には負けない」なんてね。バカな話でしょう。でも、あれ結構当たる企画らしいんですよ。サラリーマン真理を突いてる。まあ、しかし、私の場合は「営業」という仕事に挫折し、ああ、俺は利益を追求する仕事は出来ないんだな。お客から「もうヤマハのバイクはいいよ」と言われると売れない。何より、利益=儲けることは罪悪だという気持ちが頭から離れない。商売は100円で仕入れたら130円で売るのが当然ですが、どうも騙しているようで嫌だ。私はこう、青二才の頭で考え、利益に関係ない公務員になろうと考えました。
★リクルートにリクルート?
少林寺拳法もやっていたし、警察官なんかがいいかな、太陽に吠えろ!みたいに、松田優作みたいになれるのではと考え、公務員試験の参考書をとりあえず買いました。しかし、寮を出て東京杉並区阿佐谷のアパートに引っ越すと、もう金がない。親に頼るわけにもいかん。何か仕事をせねばと週刊就職情報=現在のBingをめくっていると、「日本リクルートセンター企画営業アルバイト募集」の求人広告が。「ああ、下宿にあの役に立たない段ボールの山=リクルートブックを送ってきた会社か。俺は上場会社以外は興味ないから捨てていたなあ」と思いながら仕事内容を読むと、「アポイントの後、企業取材をして原稿制作・・・」という項目に目が止まり、なんだか営業みたいだけどまあいいか。どうせ、夏の公務員試験までのバイトだと、軽い気持ちで履歴書を送りました。数日後「なんでバイトなのに6人も面接官がいるの?」と思うくらい真剣な面接。その後の適性検査と教養試験もボリュームたっぷり。1週間後、子会社のリクルート人材センターから採用の電話があり、まあいいかで初出社したのが昭和58年の1月休み明け。待っていたのはビルの飛び込み営業でしたが、これからの3年間が私の人生を変えたのです。