連載第三十四回目

★客層戦略とは
「客層戦略」とは、簡単にいえば自社のお客をどこに絞るかということ。強者・大企業の場合、すべてのお客を対象にしがちですが、弱者・中小零細企業は一点集中。
誰でもいいですではなく、たとえば「うちは20代の女性。それも独身で一人暮らしのキャリアウーマン向け」の女性誌ですとか。聖心美容外科の場合、院長といろいろ話し合った結果、既存の派手なイメージ広告に疑問を持つ、真面目な?20~30代の女性に絞りました。美容外科に限らず、すべての業界には大企業がいて、普段は派手でいいことばかりしかいわないTVCMや大きな広告をやっていますが、そして悲しいかな多くのお客はCMイメージの幻想に騙されていますが、我々は起業したばかりで最低の弱者。同じ手法では負ける。数少ない、広告を疑う客層に絞ろうと思いました。
★誇大広告やウソばっか
他は、「本気、正直、嘘をつかない」。広告はいいことばっかいいますが、もちろん現実は悪い点やマイナス面も多々ある。そもそも、私自身、広告の世界に身を置いていましたが、あの歯の浮くような世界、ヨイショ情報ばかりの世界には相当な違和感を覚えていました。JAROじゃないけど「誇大広告やウソ」ばっかジャンかと。
まあ、広告屋はクライアントからお金を貰って広告を創るから、クライアントに不利な内容を書くのは御法度。結果として、クライアントと一緒になって一般消費者を騙している・・・。ここで、私の前職での取材ライター経験というか、真実を暴くジャーナリスト魂というか、変な正義感が頭をもたげ、いくら金を貰うにしてもウソはつきたくない、ヨイショはしたくない、逆に変な会社は叩きのめしたい、一般消費者に「あの会社はやめろ」「あの商品は最低だ」「この業界なら、A社がいいぞ」という、純粋な情報というか、真実を伝えたいと強く思うようになりました。
★美容外科の真実について
幸運だったのは、まったく同じ思いを聖心美容外科の山川院長も持っていたこと。最低な美容外科のイメージを変えたい、ウソや詐欺までして生きたくない、正々堂々とした仕事をしたい、業界のステータスを上げたいと、彼も思っていたんです。こうして山川氏と何度も議論を重ね、一気に書き上げたのが「美容外科の真実について」という意見論文風な記事広告。従来の手術前・手術後のヤラセ写真やモデルも使わず、電通・宣伝会議「コピーライター養成講座」的なイメージヨイショコピーではなく、純粋な記事文をギリギリの線で、広告だが消費者にも役立つ情報=マイナス情報も入れたものを、博多のタウン誌に掲載しました。今から10年前、聖心美容外科創業の時です。山川院長は医者の息子ではなく、自己資金も数百万のみ。実家を担保の借金数千万円をして後がない。私も緊張し、初めての広告掲載後の反応を待ちました。