連載第四十四回目

★二度目の起業
こうして2度目の起業を’95年にしましたが、当初はそれまでの延長で、求人広告と営業広告の代理店でスタートしました。幸い、聖心美容外科(福岡発で全国展開の、今年度申告所得日本一の美容外科)、通信販売のやずや、旅行会社のHIS九州本部、地場大手の大成印刷などをクライアントに持っていたので、最初から毎月600万の売上と粗利120万ほどあり、マンション事務所のSOHOで嫁さんと2人だから経費少なくOK。ただ、親がかぶった借金を引き継いでいましたので、借金返済も毎月50万円。毎月スッカラカンで綱渡りでした。
ただ起業後すぐ、交流会で知り合ったOLから、アジアビジネスセンターという会社の設立広告一式も受注。ここは地場企業約50社が出資3億で創ったベンチャーで、当初は大手の電通あたりで話が進んでたんです。ところが電通あたりになると、ロゴマークは500万~数千万が当たり前。パンフレットの費用も同じ。そこを私は、安いがデキルデザイナーに数十万円でロゴマーク創らせ、パンフも自分でコピーを書いて制作費を提言。電通の1/3以下の受注額約700万、粗利150万の仕事で、これで一息つきましたね。
★エンドユーザーに役立つ広告
ただ、こういう大がかりな仕事はある意味大変。8月に取りかかり、終わったのは12月末。当時は長いコピー文章を書くのに慣れてなく、呼び出される度に心臓がドキドキし、終わった時は精根尽き果てていましたね。
新しい会社や業種から依頼があると、図書館や本屋(当時はネットがまだない)に行って関連資料でどっさり勉強。相手と同等クラスの知識+消費者としてのスタンス(相手は意外に自社・自分の業界の価値観で固まっている)で勝負しました。
前にも書いたかも知れませんが、聖心美容外科の広告を創るときなど、毎週毎週、アンアン、ノンノ、女性自身、SAYなどの女性誌を見まくり、関連のエステや美容・医学系の情報をかき集め、一般の女性の意見も聞く。そこで、消費者側の意見や見方を広告に取り入れ、クライアントの独りよがりの意見とぶつかってました。
昔も今も思うんですが、広告屋・コピーライターは、どうしてもお金を貰うクライアントの言いなり、またはクライアントが気に入る文書を作りがち。でも、それはヨイショでエンドユーザーから見るとウソみたいな広告のオンパレード。私は広告屋でしたが、いかにも広告というものが大嫌い。クライアントではなく、そのエンドユーザーに役立つ情報を発信する。それが真の広告だと、なんとなく思っていたんです。
つまり、優先順位は、社会の役に立つ・正義>エンドユーザーの利益>クライアントの利益で、いわゆる悪徳商法的なものは断っていました。でも、苦しいときはアレなんですね。正直に言うと、数回は内職商法=仕事紹介しますと言って、ツマラン教材を売り込む=などの仕事を、悪とわかっていながらやったことがあります。こっちは金を貰っていいが、その広告を見た人は騙される・・・。大企業でも、エステや英会話、FC募集なんかでは今も当たり前に氾濫してますね。でも、消費者はカッコイイイメージに騙される・・・。いつか、こういう仕事からは足を洗いたい、おべんちゃらは言いたくない、でも、食わねばならない・・。この狭間で悩んでいました。