連載第四回目

★バブリーOLの大失敗…そして気付き
1989年。時はバブル後期である。当時私は、人気企業で働くピチピチのOL。仕事も遊びも“弾けてた”。
ある日、大学時代のクラスメイトから電話があった。
彼は飛ぶ鳥落とす勢いの大手証券会社に就職している。
「じんわりちゃん、久しぶり。元気~?」
「うん、元気元気。・・・どうしたん急に?」
「いやー、実はさあ、良い話があるんやけど・・・。」
どこかの会社の転換社債を買えということらしかった。
「絶対損はさせないから。」
「えー、ホントかなあ~?」
「信用してよ、僕がちゃんとやったるって!」
「ふ~ん・・・。まあ少しぐらいならいいか・・・。」
そんな調子で、世間知らずな私は何となく引き受けた。
投資にリスクがあることは頭ではわかっていたつもりだったが、実際には全然わかっていなかった。
そして、社内預金から200万円ほど投資することになった。
株式投資の知識はゼロ。転換社債なんて聞いたこともない。
でも悪いようにはしないと言ったんだから大丈夫だろう・・・。
何ヶ月か経ったある日、証券会社から一通の郵便物が届いた。
『私が転換社債を売った』と書いてある。
「何これ?どういうこと?」
翌日、同じ証券会社からまた郵便が来た。
今度は、『私がどこかの会社の株を買った』と書いてある。
1週間ほどしてまたまた『私が株を売って別の転換社債を買った』
という通知が届いた。ここまできたら、いくら鈍い私でも、さすがに「異常だ」と感じた。
今だから言えることだが、その頃は何年も続いたバブル経済がまさに弾けようとしていた時期。経済の知識など全くない私には、景気が大きく変わろうとしていることなど察知できなかった。
しかし株は、櫛の歯が折れるように、ぽろぽろと下がり始めていた。自信をもって薦めたはずの転換社債が急落し、慌てた友人は穴を埋めようと別の会社の株に買い換えた。なのにそれがまたさらに下がってしまったので、うろたえた友人はまたまた別の転換社債に無断で買い換えたのだった。
証券マンにあるまじき行為に腹が立った。電話で問いただした時、「どうして勝手に売買したの?」と言う私の声は震えていたと思う。電話口の向こうで押し黙っていた彼の上司が家までやって来て、平謝りに謝ったが、謝ってもらったところでどうにもならない。
結局、彼は地方の支店に転勤になり、200万円の元手は時価で15万円ほどになった。
彼がしたことは決して許されることではない。しかし私はそれ以上に自分に腹が立ってきた。当事者なのに何もできなかったことが悔しい。
そう、わけもわからないまま人任せにした自分が悪かったのだ。
私の投資歴はこんな風にして始まった。