連載第五回目

★自分のリスクは自分で背負う
1995年1月17日。
妊娠6ヶ月の私は兵庫県芦屋市で阪神大震災を被災した。
実は私は数年前から地震保険に加入していて、そのことを言うと皆驚いた。大震災が起きるまで、地震保険というものの存在すら世間に知られていなかったからだ。実際、近所で加入していたのは100軒に1軒程度だったそうだ。
私はなぜ地震保険に加入していたのか?
それは、「地震は必ず起きるものだ」と思っていたからだ。
関西地方は昔から地震がないと思われてきた。だから危ないと思った。ここ数百年分の地殻変動のエネルギーが蓄積されているのだから。
大雑把な言い方だが、地震保険に加入できる人数は制限されている。例えば芦屋市内で先着○名様という具合で、枠がいっぱいになったら、入りたくても入れない場合があるということだ。
ではなぜ保険会社が人数制限をしているか?
皆が皆、地震保険に加入していたら、阪神大震災のような大規模な天災の際、保険金支払額が莫大になって、保険会社が倒産する。
「地震は起きるもの」という前提での経営判断だ。
火災保険などに加入する際、「地震保険には入りません」という欄に押印を求められるのは、地震保険を売りたくないからだろう。
私が1軒目のマンションを手に入れて、火災保険に加入する時、「地震保険も入ります」と言ったら、うっしーは大笑いした。
「地震保険?博多では入る人いませんよ。地震はありませんから。」
「何言ってるんですか~。今までなかったから、入るんです。神戸の人も、地震はないって信じてたんです。でも、地震はどこででも起きるんです。いつ来るかだけの違いですよ。」
あの震災でいろんなものが見えた。現代の都市生活のモロさ、ライフラインの脆弱さ、政府の不甲斐なさ。そして自分の無防備さ。
いざ大天災が起きたら、国や役所はアテにならない。というよりも、どんなにがんばったところで、全ての災害を予測してカバーするなんてできるわけがない。だからせめて自分でできることは自分でやっておく。それが私なりの人生のリスクヘッジだ。