連載第十一回目

★田舎でスキルアップ?!
「泣いて頼んでもだめか?」そう言って遺留してくれた上司の言葉を胸に、2000年3月末、13年勤めた会社を退職した。
子どもの幼稚園の入園式に間に合うよう、慌ただしく引っ越した。
九州にある半農半漁の小さな田舎町である。
足がないと身動きが取れないので、まずは車のディーラーへ行く。
方向音痴対策として、カーナビ付きの小型車を買う。
次はハローワークだ。失業手当の手続きのため何度か通ううちに、「職業訓練制度」というのがあることを知った。失業手当をもらいながら、いろんな技能を習得することができる。これを活用しない手はない。これを機にスキルアップしよう。事務系のコースに入学し、取れる資格は全部取ることにした。
6月から11月まで職業訓練を受けた。11月は、資格試験を受けながら就職活動をした。自分がやってみたいような仕事があるとは思えなかったが、とにかく探した。この際だからできるだけ小さな会社がいい。
大きい会社組織はもう13年も経験したから、大体わかっている。
だから今度はできるだけ小さな組織に入って、生身の経営に触れてみたい。
12月には、希望通り、これ以下はないという小さな会社に就職した。社員は私ひとり。入社して最初の仕事は、自分のための就業規則作りだった。
次に、税務署に事業所設立届けを出し、銀行口座を開設する。自分のための社会保険と雇用保険加入手続きもした。労働者名簿も給与明細書も自分で作る。ついこの間まで職探しに通ったハローワークに行って、今度は雇用保険の加入手続きをした。
税理士も社会保険労務士もいないから、エクセルで、勤務簿と連動した給料計算表を作ってみる。
基本給に残業代や出張費を上乗せして、天引きの社会保険料を差し引いたものが課税対象となる。そこから源泉税を自動計算させて、それも天引きする。最後にガソリン代などの立替金を上乗せしたのが支給額。給料計算をして、源泉徴収し、所得税の納付書を書き、銀行の窓口で納付する。
何から何まで初めての経験で戸惑うことばかり。しかし、これらは全て自分のノウハウになった。