連載第十五回目

★不動産投資・・・注意1秒、怪我一生
不動産を買って大家さんになると決めてはみたものの、今の今まで全く無縁の世界である。どこでどう調べるのかもわからない。闇雲にYahoo!の不動産のカテゴリーを覗いてみる。
「投資用不動産」で検索をかけてみる。あるわあるわ、不動産販売会社。手当たり次第にあちこちのホームページを覗いてみる。どの会社も、画面から「買ってください」オーラがいっぱい出ている。きれいごとばかり書いてある会社はすっ飛ばして、物件情報だけが淡々と掲載されているサイトを選び、手ごろなアパートを探す。
良さそうな物件が2件見つかった。ひとつは宮崎県内。22室で4700万円。家賃は平均4万円。満室経営なら、月々の家賃収入は88万円。年収1056万円。利回りは22.4%。本当だろうか。
問合せると、すでに別のお客と交渉中だという。しかし数日後に、「あちらの話はキャンセルになりました」との連絡が入った。なぜキャンセルになったのかは教えてもらえなかった。
素人なりにあれこれ想像を巡らせて出した私なりの結論はこうだ。
「この物件は築15年経過している。ということは、水周りと外壁のオーバーホール時期が来ているはず。購入直後に、大きな出費があるとしたら、とても賄い切れない。このリスクは避けるべき。」
もう1件は東京都内、6室で2400万円。23区内でこの価格は掘り出し物に違いない。何はともあれ問合せメールを出してみる。取扱いは、銀座にある不動産会社の取扱いだ。私が出したメールに対して、待ってましたとばかりに、懇切丁寧な返事が来た。
「この物件はもう売れましたので、別の物件をご案内します。」
早速、物件情報が郵送されてきた。東京都内で6室で3000万円の物件である。東十条駅から徒歩3分。全室ロフト付きで築年数は14年。家賃は6万円で現在満室だという。年間の賃料は432万円。地代が毎月16320円かかるので、それを賃料から差し引くと利回りは13.4%。かなりの高利回りだ。お買得かも知れない。しかし何か妙な感じがする。どこかがおかしいのだ。
間取り図を何度も何度も眺めてみて、ようやくわかった。間取り図がシンプル過ぎるのだ。柱はどこだ?間取り図を見れば普通は柱の入っている部分がわかるものだ。しかしこの図面にはそれがない。
正式な図面ではないということか。しかも、「図面が異なる場合は現況を優先します」と書いてある。図面と実際が違うかも知れないと堂々宣言しているわけだ。
おかしなことはそれだけではなかった。このアパートの部屋には、玄関がない。ドアの外に靴を置くのだろうか?部屋の前に立って、入り口のドアを開けるといきなり寝室だ。玄関がないので、当然、下駄箱もない。よく見ると押入れもない。各部屋の面積は14m2。ロフトがなければ、布団を敷いただけでいっぱいだろう。部屋の約半分はバストイレとキッチンだ。家財はどこに置くのだろう。
チラシの説明文を、もう一度目を皿のようにして見る。「借地権」と書いてあるのが目に留まった。毎月地主に16320円の借地代を支払うことになっているらしい。
ということはつまり、3000万円は、全部建物代ということだ。
東京の不動産が高いのは地価が高いからだ。この建物に3000万円の価値があるとは私にはとても思えない。それに、ある日突然、地代を値上げされないとも限らないではないか。
それに、築14年の木造スレート葺きアパートをローンで買ったとしたら、返済が終わる頃には老朽化して、とても人に貸せる状態ではないだろう。もし買っていたら大変なことになっていたはずだ。
あとで知った情報によると、ネット上に客寄せ用の高利回り物件を出しておいて、問合せが来たら、「その物件はもう売れたので別の物件を・・・」というやり方は常套手段なんだそうだ。
不動産に限らず、投資というのは、宣伝文句に惑わされることなくシビアに見極めることが何よりも大切だとつくづく思う。