連載第二十二回目

★百聞は一見に如かず
私は自分が書いたメモを読み上げた。
「フレ○ション大分。JR大分駅から徒歩15分。バスなら1駅。バス停から3分。周辺は閑静な住宅街で環境良好。大通りまですぐだが、1本奥なので静か。国土交通省宿舎、保育所隣接。徒歩3分に大型スーパーと大型PC専門店。徒歩4分に内科、歯科、教会、和裁学校。徒歩5分に公園。室内はフローリング、エアコン付き。東向き、オートロック、管理人室あり。自転車置き場あり。1K、押入れ1間分あり。バス・トイレは別タイプ。管理会社は東○コミュニティ、担当の○藤さん10月20~21日は福岡出張。管理費4300円。修繕積立金5380円。以上です。どうでしょう?」
「なるほど。なかなか良さそうじゃないですか。」とうっしー。
「ええ、そうなんですよ。でもね…隣にある公務員宿舎とずいぶんくっついて建ってるんです。ベランダ同士が向かい合ってるような感じで見晴らしは良くないようです。それと、建物の色がびっくりするような変な青色です。」と私。
「う~ん。そうですか。ところで、郵便受けはありますか?」
「ありますよ。目の前に。それが何か?」
「何個ぐらいありますか?」
「えーと、9×8階で72個あります。」
「72部屋あるってことですね。それじゃあ、チラシがいっぱいになってる郵便受けは何個ありますか?」
「は?チラシ?1,2,3…8個はチラシでぎゅうぎゅうです。」
「72部屋のうち8部屋が空室ってことですね。うーむ…。」
「それがどうかしたんですか?」
「いや…、今の時点で空室率が10%を超えてるってことは、将来建物が古くなれば、もっと空室が増える可能性があります。近所に新しいのができると、若い人はそっちに行っちゃいますから。」
「ああ、なるほど!そういうことですか!」
これがプロの目で見るということか。
「空室が多いということは、人気のないマンションということで、家賃を下げて入居者を探すことになります。そうなると将来は家賃が3万円ぐらいに下がるかも知れませんね。」
今は家賃が36000円。管理費と修繕積立金を合わせると約1万円だ。つまり手取りは月約2万円だ。年間24万円。250万円で落札したとして利回り9.6%だ。諸経費もいるだろうから、この時点で最低10%はないとまずいのではないだろうか。そう考えると、当初安いと思われた最低売却価額182万円は割高感がある。
この物件は私には向かない。今回は見送ろう。
それにしても、ものすごい労力だ。こんなことばかりしていたら、疲れ果ててしまうだろう。不動産関係の本に競売は何かと大変だと書いてあったが、なるほどこういうことか。ぐったりしていたら、うっしーが一言。
「実は今年から、インターネットで手軽に検索できるようになったんですよ。」
地獄で仏。渡りに舟。暗闇に一筋の光明。天は私に味方した!?