第三回 公開SOHO談義

第三回 シリコンバレーのSOHO事情

中村 こんにちは、 SOHO’s Club の中村です。
尾形 こんにちはSOHO’S WORLDの尾形です。
中村 第3回目になる今回は、ゲストの方をお呼びしております。
井手 こんにちは、ムーンライトインタラクティブの井手です。
尾形 井手さんはシリコンバレ-からですね、ちょっと自己紹介していただけませんか?
井手 サンマテオというシリコンバレーの北の端(?)に位置する町からです。私は昨年まで某日本のソフト会社の現地法人の社長をしてましたが、今年自分の会社を立ちあげたところです。
中村 たしか井手さんは、WebStudio(月刊誌)にコラムを連載されてますよね。
井手 はい、7月号から。次のがもうすぐ出る筈です。
尾形 昨日買ってきた所です、WEBSTUDIO。読むのが楽しみです。
中村 毎号、シリコンバレーからのレポートなどを書かれる予定ですか?
井手 当分の間、話題の会社とかテクノロジー、それと私の知り合いの面白い会社や人間を紹介する予定です。
中村 シリコンバンレーといえば日本の私たちにとっては、憧れの環境ですね。そこでのお話を聞けるというのは、読者としても随分と夢を膨らまされて大変うれしいです。
尾形 そちらでは同様に日本人で起業する方は結構いらっしゃるんですか?
井手 日本人より、アジア人の方が多いでしょう。日本人はやはり駐在員が多いです。
尾形 井手さんはおいくつなんですか?
井手 40まであと数ヶ月...
中村 すでに10年もアメリカにいらっしゃるということで、言葉の壁などはほとんどありませんよね。
井手 英語は割と好きでしたから、そんなには苦労しませんでしたけど、それでもこちらに来てまごついたことは最初はありました。
中村 ところで、日本の会社を辞められて、シリコンバレーで独立されるのには、何か特別な目的等があったのですか?
井手 とにかく会社を辞めたのは、そろそろ色々やってきたことを生かして、自分のやりたいことをやる時期かな、と思ったことです。私の場合、やりたいことというのは、音楽とテクノロジーの融合なんです。(かっこよくいえば)それと、やっぱりインターネットの台頭かな。
中村 音楽とテクノロジーの融合っていうことを、もう少し詳しく教えてもらえませんか?
井手 えーと、今立上中のサイトで、インディーズ4ジャパン(http://www.indies4japan.com)というのがありまして、これはアメリカのインディーズレーベルのCDを日本向けに販売するオンラインショップです。
井手 それと、アメリカでは音楽・コンテンツレーベルとしてCD、CD-ROM, 音楽ソフトとかを開発・販売していきます。
井手 第一弾のCDは、10月に私のギター(^^;)と、日本の川崎さんというシンセアーティスト。それと、Java関係の音楽ものをプロデュース中(これは日本で先行発売)というところです。
井手 とにかく、音楽に関係のあることなら制作からプログラミングまで、色々やっていこうという感じです。
井手 独立のひとつの動機は、私は昔ミュージシャンだったのですが、40までに自分のCDを出そうという、結構安易なところからなんです。実は...
井手 それに、自宅でCDクオリティーの音楽がフルデジタルで作れるようになってますし。良い時代ですね。まったく。
尾形 聞いてみたいですね、井手サンたちの創った音。
中村 そうですね。
井手 もうちょっとしたら、リアルオーディオで聞けるようになります。
尾形 たのしみですね。
井手 インディーズ4ジャパンの方も、リアルオーディオとリキッドオーディオで試聴できます。
■ シリコンバレーのSOHO事情
中村 それでは、そちらでのSOHO事情をみなさんに教えていただきたいのですが。
井手 基本的にまず会社の作りやすさがあると思います。州によって違いますが、デラウェア州などでは、50ドルでも会社が出来るそうです。それを商売にしてる会社登録代行業とかもあります。
尾形 設立資金が安い事や設立資金や税率が低い事が一番大きなメリットですよね。
井手 それと、やはり社会全体の雰囲気としてSOHOでもまったく関係ないみたいな。結局会社の大小ではなく、クレジット(信用)を積み重ねていけば制約はほどんどありません。
中村 それが大きいのだと思います。
尾形 日本では企業との契約の際に商業登記簿謄本の提出が条件になっている所が結構あるので、SOHOでも法人化していない所は大きな仕事を取るのが難しいですよ。業界によっては問題ない所もあるようですが。
井手 それに、株式会社の資本金は1000万でしたっけ?
中村 そうです。
井手 こちらは、最低資本金というのはないと思います。もちろん、資金は必要ですが。
井手 ただ、SOHOといっても2種類あって、SOHOで始めて将来の上場を目指している上昇志向のベンチャーと、SOHOでずっとやってるタイプとは大分違いますね。
尾形 そうですね
中村 日本では企業化志向SOHOと依存型SOHOにわかれているような気がします。
井手 依存型って?
中村 この談義でもよく話がでてくるのですが、仕事がくるのを待っているような人たちです。何かに所属していれば、在宅で仕事ができると思っている人たちです。
井手 在宅勤務者?
中村 日本では、SOHOを在宅勤務者イコールで考えている人が多いのです。
井手 確か、ロスの大地震のあと、渋滞解消とかで自宅勤務が大分盛んになったとか。
井手 在宅勤務はこちらでも盛んになりつつありますが、それはリモートワーカーとか言います。
中村 そうなんですか。
井手 SOHOはあくまで、独立して会社またはDBA(Doing Business As)ででやっているところです。
尾形 日本はまだかなりアメリカと違う部分が多くて(社会環境やインフラの整備の遅れなど)SOHOでビジネスとして成り立っている所はすくないようですね。
井手 アメリカには、S-Corporationという制度があります。
尾形 それはどんな制度ですか?
井手 ちゃんとした会社なんですが、株主数に制限があったりしますが、その代わり個人と法人税を二重払いしなくて良いみたいな制度です。
中村 株主数に制限があるというと、あまり資本を増やせないということですか?
尾形 増やしにくいって事でしょうね。
井手 まぁ、ベンチャーキャピタル入れて公開する場合は、制限あり、というところですか。株主数は確か20人以内だったと思います。 でも、事実上公開する企業はごく一部だし、ある程度の規模までは、OKでしょう。
中村 アメリカは店頭公開を目標にしている人が多いと聞きます。日本ではあまりその傾向は見られないような気がしますが。そういった場合に制限がかけられているということですね。
井手 確かにシリコンバレーでは、一旗あげようという会社ばかりです。NASDAQ公開が目標です。そうやって大金持になった人がまわりにごろごろいれば、その気になりますよね。
尾形 そうですね。
井手 口の悪い人は、シリコンバレーバブルって言ってますけど。確かに景気は良いようです。
尾形 そんな風に言われてみたいものです。資金調達は大きな問題ですよ。資金がないから大きくなれない、大きくなれないから資金がない。 悪循環のチェ-ンをどっかで切らなければ何も変わらないのですが動く程に障害にぶつかる。
若手のやる気のある人がつぶれていきますね、このままでは。 国や自治体の支援事業そのものがほとんどデキレ-スですしね。
中村 そうですね。日本も色々と見習ってほしいところがたくさんあると思います。それではそろそろ第3回のSOHO談義を終わらせていただきたいと思います。井手さんどうもお忙しい中ありがとうございました。
尾形 井手さん、ありがとうございました。私や中村さんの10年後ってどうなってるんでしょうね。やる気のある方や能力のある方は日本にもたくさんいると思います。
そういった方が伸びていける環境がすこしはできていくといいなと思います。 井手さんのお話を伺って、税政問題だけでなく社会性や国民性もなにか大きな要因になっているような気がしましたね。