連載第二十七回目

★2軒目のオーナーに
「2軒目探すんですか?」うっしーがあっけに取られている。
「はい。探します。早くキャッシュフローを安定させなくちゃ。」
早速、次の物件を探して現場を見に行く。建物自体は悪くはない。
管理人も常駐している。しかしどこか暗い感じがする。
「どうでしょうね?」と私。
「ぱっとしませんね。」とうっしー。
「ぱっとしないって、どういうことです?」
「この辺りは、道が狭くて曲がりくねって見通しが悪いでしょう?
街灯も少ないから、夜道はかなり暗いですよ。こういう場所、時々あるんですが、僕は好きではありません。」
「なるほど・・・。」私が感じた暗い感じはそれだったのだ。
「じゃ、ここはパスして、次行きましょう。」
次の物件は駅からなんと徒歩10秒。下町のにぎやかな場所にある駅に隣接している。
「これ良さそう!」
「そうですね。これは任意売却いけるかも知れませんよ。ちょっと調べてみましょうか。」
『任意売却』とは、競売入札が開札される前に、持ち主や債権者と話をつけて直接買い取ることである。任意売却ができれば、第一に他の入札者と競争しなくて済む。ずいぶんなストレス軽減である。
しかも、持ち主と直接価格交渉ができる。さらに、競売よりも取引がスピーディだ。ただし、時間的にも技術的にもハードルが高い。なぜなら、債権者全員が納得した上で、競売にかけられている本人と連絡を取り、売買契約書にサインしてもらう必要があるからだ。これはプロの手を借りなければ私には無理だろう。
「それにしても、そんな都合のいいことができるんですか?」
「確約はできませんが、条件次第ではうまくいくかも知れません。あとは僕にお任せください。」
「はーい。」というわけで、うっしーに交渉を任せることにした。
「ではまず予算を決めてください。これは重要ですよ。」
「じゃあ、弥勒菩薩さんにちなんで、369(みろく)万円!」
「了解しました。」
予算とは、諸経費、登記費用その他すべて込みの総額である。
オーナーからはあれやこれやと難しい条件が提示された。しかし、蛇の道は蛇、餅は餅屋、うっしーの交渉テクニックで無事商談成立となった。駅から徒歩10秒、築13年のこの物件は「購入以来、一度も空室になったことがない。」と前のオーナーが豪語する通りの優良物件。
契約書を交わす時に会った前のオーナーによると、
「13年前、新築で買った時は1500万円以上払ったよ。値段が上がったら売るつもりだったのに、上がるどころか、下がる一方。おまけにローンの支払いが毎月8万円で家賃収入が5万円。管理費や税金やら入れると毎月3万円の持ち出しじゃ済まないんだよね。全然割に合わないから、手放すことにしたんだ。」と屈託がない。
こうして2004年3月、私は2軒目のオーナーになった。その他も合わせると、月約15万円の不労所得を確保することができた。
第一の目標は達成したのだが、私はここではたと立ち止まった。