連載第六回目

★投資信託でもやってみるか?
育児休暇で、赤ん坊の世話だけをする生活は時間がある。
今なら何かできそうだ。今の私にできることは何だろう?
ちょうど、使い道の決まってないお金が60万円ほどあった。
急がないお金なので、じっくり運用すればいい。そう考えて、会社の財形貯蓄の担当者に頼んで、会社が契約している証券会社を紹介してもらった。早速証券会社から営業担当者が自宅にやってきて、投資信託を勧めた。
投資信託は、プロが運用してくれるという。
大失敗だった株よりずっとうまくいくかも知れない。
「ハイリスクハイリターン型、ミドルリスクミドルリターン型、ローリスクローリターン型がありますが、どれにしますか?」
迷わずハイリスクハイリターン型を選んだ。その方が勉強になると思ったからだ。
ところが、私が買った投資信託はまもなく下がり始めた。
下がる一方で、一向に上がってこない。これでは株と変わらない。
厳密に言うと、下がる時のカーブは株よりはなだらかだ。しかし、上がる時の曲線はさらに緩やかで、結局戻ることはなかった。
でもその投資信託を選んだのは自分だ。全ては自己責任だ。
投資信託は、上がっても下がっても手数料がかかる。手数料には、発売時の宣伝広告費や運用する人の人件費も入っているはずだ。
勉強と思って、いくつかの投資信託の投資銘柄を比較してみると面白いことがわかった。どの投資信託にも同じ銘柄がずらっと並んでいるのだ。しかも誰もが知っている古手の大企業たちだ。
ベンチャーファンドなのに、創業100周年みたいな老舗企業が複数入っていたり、バイオテクノロジーのファンドなのに全く関係なさそうな銘柄が入っていたりして、大体似たり寄ったりの顔ぶれだ。おそらく、全体の安定性を保つためのバッファとして組み込まれているのだろうと私は解釈した。
つまりこういうことだ。「新興銘柄株式」は値動きが激しいのが特徴で、新興銘柄を好む人にとってはそれが魅力である。
しかし、「新興銘柄に特化した投資信託」にあまりに急激な値動きは好ましくない。なぜなら、投資信託を買う人は、緩やかな上昇を好む人たちであり、極端な上げ下げを好まないからだ。
何かの拍子に大きく下がると、一部の客がパニックを起こして大量の解約が出る。その時、証券会社はどうするか?
仮にその投資信託に100銘柄組み込まれているとする。そのうち30銘柄は上がっていて50銘柄は下がっている。20銘柄は変わらずだとすると、上がっている30銘柄から売りを出して解約分を清算する。(需給の関係により、人気が下がっている銘柄を大量に売り捌こうとすれば、買い叩かれてますます値崩れを起こすだろうから。)
ということは、大量の解約が出た後は、下がっている銘柄の割合が増えていることになる。だから、一旦下がり始めたらどんどん下がる、悪循環の銘柄構成になってしまうのだ。するとその投資信託は面白みを失い、人気がなくなる。証券会社も新しい別の投資信託に力を注ぐようになるのだろうと私は推測している。
そんなことなら、初めから自分で運用する方がよっぽどいい。
私はそう思う。