連載第十九回目

★謎のブローカー、うっしー。
ネットで知った謎のブローカー。恐ろしいが、今の私には必要だ。
抑揚のない文面から察すると、60がらみの気難しい男性だろう。
怖いもの見たさで「私でも競売に参加できますか?」と書き込んでみた。すると、あっさり「できますよ。」という。競売ってそんなに簡単なものなのか?
当時の私には、競売の他にやるべきことがもうひとつあった。これからどんな仕事をして生活するのか方向性を決めるということだ。
どこかに就職するという気持ちはない。自分で事業を興すならば、何か特別な自分だけのノウハウか、専門的な資格かどちらかが必要だろう。しかし、取りたい資格もない。
それにしても、私にしかできない仕事なんてあるんだろうか?折も折、友だちが栢野さんの起業セミナーを主催するという。そういう場に身を置けば、良い刺激を受けられるかも知れない。私は早速、参加申込みをした。
驚いたことに、例のブローカー氏も参加するという。一石二鳥だ。
セミナー会場は別府温泉の古い集会所だ。会って驚いた。意外にもさわやかな好青年だ。それがうっしーこと、タウントラスト牛嶋氏との出会いだった。
「競売に参加したいので、その節はよろしくお願いします。」と、挨拶する。「えっ、本当にやるつもりですか?」うっしーは呆気に取られているが、とにかく道筋はついた。
私は半分目的を達したような気分で、セミナー会場を後にした。